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小さな書店から広がる、つながりの輪。(3)  奥山 恵さん / Huckleberry Books


柏で生まれるつながりの輪

――この柏にお店を建てた大きな理由は何かありますか。

店をやるにも、知らない土地っていうのは不安で、やっぱり自分が生まれ育ったところっていうのは、なんだかわかんないけど安心感がある。だから、やっぱり柏でやろうっていうふうに思ったんですね。

――その柏という街に対しては、どういう印象を持ってらっしゃるのでしょうか。

割と地元の人が地元を好きっていうか、そういうのは感じたので、それはいいんじゃないかと思いましたね。

――柏という地域の中で、このお店はどんな場所になっていると思われますか。

そうですね、うちの店2010年にオープンしたんですけども、その次の春に震災があったじゃないですか。震災の後も何日かして停電にはならなかったんで、お店は開けていたんですよね。

そうすると、昼間いる場所がないっていう、小さい赤ちゃんを連れたお母さんとかが来て、なんかここに来るとホッとするみたいな、そういうことを言ってくれて。

その時にやっぱりお店って、人がなんかの時に行ける場所っていうか、集まれる場所なんじゃないかっていうふうに思ったんですね。

――このお店に来られた方同士がつながるっていうことは結構あるんですか。

それはね、結構あると思います。店に来るお客さんはほとんど地元の人なので。

うちの二階はレンタルスペースとして、1時間500円でお客さんにお貸ししているんですけど、そこでなにかイベントをやるといろんな人が来てくれるわけですよね。そこで知り合いになる人ってたくさんいて。

――どういったイベントをされているんですか。

まず一つは、絵本の原画展をやって、それで作家さんに来てもらってトークイベントとかをやったりしています。

ここのレンタルスペースは、そもそも集客のために原画展をやるスペースとして考えていたんですね。原画展とか展示会をやると、その作家さんの生徒さんとか知り合いの方が来てくれて、ついでに下の店も見てくれるので集客の効果はあるんですね。

それと同時に、いろんな人にレンタルスペースを使ってもらって、そこで文化の交流の場になればいいなという思いもありましたね。

あとは、去年ぐらいから文学茶話会っていうのを始めたんですよ。これはほんとに文学を読もうってことで、ある程度児童文学の読み物をテーマにして、トークをしたり、それにかかわっていろんなワークショップをしたりっていうのはやっています。

文学茶話会は、一番最初は『ハックルベリー・フィンの冒険』の作者のマーク・トウェインでやったんですよ。その時は私がお話をしたり、トウェインの名言が書かれたコラージュみたいな名言ポスターを作って遊ぶってことをしていました。

それで来年は世界の児童文学ってことで、2月ぐらいに西アジア、トルコとかアフガニスタン、クルドなど、今いろいろ問題になっている地域の児童文学のことをゲストにきてもらってトークしたり、トルコのお茶をいれてみたりしてみようかなって思っています。

そういうのは、児童文学の楽しさみたいなものを学生さんとか、児童文学を全く読んだことがない人たちにも知ってもらって、これをきっかけに子どもから大人まで児童文学を読んでくれたらいいなってことでやっていますね。

――近くのお店とのつながりというのはあるのでしょうか。

この柏三丁目周辺の個人の店の集まりで、今オリーブサロンっていうのをやっているんです。

それは去年の9月ぐらいに、ここら辺にあった洋服屋さんとかカフェとかが一気に閉店した時があって、私はこのままでは柏三丁目はまずいっていうふうに思ったので、近くのレストランタキガワさんとくり原さんっていう器のお店の方と、個人のお店で集まって情報交換するだけでもいいからやろうと思って、何人かお互いに声を掛け合って10人ぐらいでオリーブサロンを始めたんですね。

今は個人のお店でお互いにどんな工夫をしてるのかとかを、2か月に一回ぐらい集まって話をしているんですね。業種によって頑張り方が違うっていうのも面白いし、一人ずつ起業についてのお話を伺ってくのがすごく楽しくて。

それで、オリーブサロンで今年の10月にOAK WALKという、街の個店をまわるとプレゼントがもらえるスタンプラリーをやったんですよね。

OAK WALKは、私が京都でやっているスタンプラリーをたまたま見てきて、これは面白いと思って提案したら、オリーブサロンの皆さんがそれはいいね、みたいな感じで参加してくれたんです。

その時に、それぞれの店が知り合いのお店にお声掛けをしてくれたので、OAK WALKに載っているお店は、お互いが自信をもって薦められるっていうのがあるんですよ。

――そのOAK WALKの反響はありましたか。

今年ははじめてであんまり告知もできなかったのでなかなか知ってもらえなかったんですけど、やっぱりOAK WALKがあることで、お店のお客さんとのコミュニケーションとか、あとお客さん同士が話をしているとか、そういうコミュニケーションの一つのきっかけになったのはすごくよかったです。

あと、個人のお店ってなかなか入りづらいと思うんですけど、こういうイベントがあるとこれで来ましたっていう新しいお客さんも結構来てくれたんです。

それで、一回提案しただけでこれだけできるっていうので、柏の人脈のつながりってすごいなと思いました。

――奥山さんは本のイベントの「本まっち柏」もなさっていますよね。こちらはどんな動機で始められたのでしょうか。

私は本まっち柏を開催している本活倶楽部のメンバーなんですね。

やっぱり、柏の駅前は人が多いんですけど、もうちょっとこの辺までお客さんに来てほしいっていうのがあったんです。地域が沈んでしまったら、店だって成り立たないじゃないですか。

それで、柏もいろんなイベントがあるけど本のイベントはまだないから、やっぱり本のイベントがやりたいっていうのもあって、東京の谷中で開かれている古本市を参考にしてやろうと思って、有志で一緒に呼びかけたら、何人か集まってくれたんです。

――本活倶楽部はどのような活動をされているのでしょうか。

本活倶楽部は、大家さん班と出店班で分かれて役割分担をしているんですね。

まず大家さん班について、本まっちはお店の軒先を貸していただいて古本市を開いているんですけど、その軒先を貸してくださるお店のことを大家さんっていうんですね。そういった大家さんを探すことは大家さん班を中心にやっていました。

それでもう一つ、本活倶楽部には本まっちに出店してくれる出店者を集める出店班っていうのがあるんですけど、私はそっちの出店班にまわっていました。

――本まっち柏の反響のようなものはどうでしたか。

今年52店舗出たんですけど、本まっちは試行錯誤しながら、すこしずつ大きくなってきて。

古本市は谷中を含めて全国いろんなとこでやっていますが続かないっていうところが結構あるんですけど、本まっちは本活倶楽部を始め、スタッフの人が一生懸命やっているのもあって結構長続きしています。

あと、本まっちでは出店する方に出店料をいただいているんですけど、その出店料も格安の500円にしていて、近所の子どもたちとかも気楽に出れるんですね。だからやっぱり、やれる範囲で小さな規模でやるっていうのが、長続きしている理由じゃないかなと思いますね。

小さな書店の、大きな夢

――この本屋さんを通して、柏の街がどんな風になっていったらいいと思いますか。

一つは、ほんとにちょっと遠大な夢だったんですけど、定時制高校で働いていた時に今の定時制高校の生徒たちって就職もなかなかできないっていうか、就職できてもすぐやめちゃうっていうのがあって、世の中で若い人があんまり大事にされていないと思っていたんですね。

そういうこともあって、若い人たちが働ける場所っていうか、やりがいを持って生きられる場所みたいのを創りたいっていうのが、本屋を始める一つの小さな動機にはあって。

でも、もっと店が大きくなって2号店をつくって誰かに任せられるとかいうことができればいいんですけど、自分の店で誰かを雇うっていうのは、なかなか今は無理だろうなと。

だから、直接は無理かもしれないけれども、なんかいろんな人が働ける場みたいなのを、作る手伝いのようなことをしたいっていうのはすごくあるんですね。

――例えばどういうことを考えていらっしゃいますか。

例えば、OAK WALKに入っている、スワンベーカリーさんっていうパン屋さんは、障害のある人も一緒に働くっていうことで、ヤマト運輸の会長さんが立ち上げたお店なんですよね。そういうつながりを通して、柏っていう街が障害のある人もそうだし、若い人なんかが働くいい場所になればいいなっていうのは思いますよね。

基本的に、本屋に来て子どもと一緒の本を買ってくれるご家庭は心配ないんです。でも、それ以外の見えないところにいて、大変な思いをしている子どもたちはいっぱいいると思うので、そういういろんな問題を抱えた子を地域で救うことに関われればいいなと思います。

――最後に、起業を考えている人へのメッセージのようなものがあったらお願いします。

あんまりなんか偉そうなことは言えないっていうか、やるといいよみたいにはなかなか言えないんですけど、上野千鶴子さんの本とかを読んでみると、これからの女性の生き方として、いくつか兼業しながら仕事をするのがいいと言っているんですね。

個人で起業する仕事っていうのは基本的に、そんなに大きなものではないじゃないですか。『月3万円ビジネス』という本もあるんですが、小さな仕事だけど利益3万円ぐらい生み出せるような仕事をいくつか持つっていうのが、ローカルでエコな生き方として今後必要なんじゃないかと思うんですね。

うちの店もいまはまだ赤字ぎりぎりで、私の利益はゼロぐらいなんですけども、店で3万円ぐらいの利益があり、大学の講師でも3万円ぐらいの収入があって、原稿料も少しあって、それらが3つ4つあれば暮らしていけるみたいな。

そういう、兼業しながらやっていくってこともあっていいと思います。だから、起業するときも、あんまりその、一つの仕事でバーンとやっていこうみたいなのだけじゃなくて、いくつか兼業しながら環境に負荷をかけない小さい仕事を、持っていくっていうことを薦めたいです。

Huckleberry Books

〒277-0005 千葉県柏市柏3-8-3 (柏駅東口から徒歩8分) TEL / FAX 04-7100-8946

営業時間:10:30~暗く なるまで 定休日:火曜日

小さな書店から広がる、つながりの輪。 奥山恵さん/Huckleberry Books

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