仲間とともに「世界一愛される会社」を目指す。(4) 渋谷 修太さん/FULLER
- 椎名美季
- 2016年1月14日
- 読了時間: 7分

「世界で一番働きやすい楽園みたいなオフィスをつくりたい。」
――つくばのアパートから始まって、同じつくば市内の一軒家、そして守谷のオフィスを経た後に、ここ柏の葉KOILを選ばれたのはどうしてですか?
一昨年の6月、ちょうど新しいオフィスを探していたときに、ここでAsian Entrepreneurship Award 2014というイベントあって、そのとき初めてKOILを知りました。
いろいろな作業の仕方が出来るスペースがあって、いろんな人がいてコミュニケーションできて、開放的で……あっ!これシリコンバレーちっくだ!って思ったんです(笑) オフィスのサイズがいろいろあって、成長にあわせてどんどん移って行けるっていうのもよかったですね。 あと、最近では、温泉にも入れるんですよ(笑)
――温泉ですか?(笑)
隣のホテルの温泉に社員が入れるようになったんです。うちフレックスタイム制なので、昼3時になったら温泉に入ってリフレッシュしてからまた仕事する人とかもいますよ。 あと、お昼もそこのアゴーラ (※1)さんにお願いして、オフィスの利用者用のブッフェを始めてもらいました。
――素敵なオフィスですね。
僕は、Googleを超えるような世界で一番働きやすい楽園みたいなオフィスをつくりたいと思っています。Googleクラスの面積で、いろんなものがあって、みんなが働きやすくて楽しめるような環境があって……あとはここには温泉があるんで、Googleにもちょっと勝つ(笑)

卓球台のほか、レーザーカッター、3Dプリンターなどの設備まである
「まちが成長して、自分たちの会社も成長して……どっちが速いか競争ですね。」
――では、柏の葉にオフィスを構えたことに関して、何か他に理由はありますか?
あと、まちとしての構想がよかったです。 柏の葉って、2030年までに世界一のスマートシティをつくるっていう計画があるんです。 やっぱり、ビジョンとか夢があるものってすごいいいなあと思っているんですよね。 まちが成長して、自分たちの会社も成長して……まちと会社、どっちが速いか競争ですね(笑)
――先ほどKOILがシリコンバレー的だ、というお話がありましたが、柏の葉というまちはどうでしょうか?
都心部からの距離や環境は近いと思います。満員電車のストレスもないですし、空気もおいしくて……働く上でのストレスが少ないですよね。
ただ、シリコンバレーっていうのはすごく特殊な場所で、世界中から優秀な人材や夢のある人材が集まってきて、ブラックホール状態になってるんですが、その吸収力みたいなものはあんまりないですよね。
日本には夢を追うことがいいことだっていう空気が満ちているような特殊な拠点がありませんが、いずれここがそういう場所になっていけたらいいですよね。
――KOILの運営者をはじめ、周囲からサポートされている感じはしますか?
めちゃめちゃします。会社のこともいろいろなところで話してくれるし、温泉やランチもそうですね。 あと柏市も結構応援してくれるなあと思っていて、成田までの高速バスの要望をだしたら、それが通ったんです。
――KOILや柏の葉のまちで、交流はありますか?
結構ありますよ。KOIL内の卓球大会とか、東大と組んだお祭りとか、アジアの起業家を呼んだイベントとか。 一つこのまちに足りないのは、世界的知名度がある「これ毎年ここで開催されるよね!」みたいなイベントですかね。サウス・バイ・サウスウエスト(※2) みたいな。年に1回たくさんの人がそのまちに行くから、知名度がすごく上がるんです。
世界中の人が年に一回ここに来るみたいなでっかいイベントをつくっていかなきゃいけないな、とは思っています。これはたぶん僕の仕事ではないんですけど。
制約の中で楽しさが生まれる
――日本など、IT企業は東京の渋谷などに集積しているイメージがありますが、渋谷などを選ばずに柏の葉を選んだのはなぜでしょうか。
やっぱり人口も自然環境も違うし、環境がいいですよね。
僕、みんなが渋谷に集まるから渋谷に行くとか好きじゃなくて、逆張りしたい派なんです。 そもそもベンチャーやるって基本的にアンチテーゼで、社会の中でここが問題だから変えていったほうがいいよね、という考えがもとですよね。
それを前提として考えると、あれ、みんな渋谷に行くから渋谷に行くんだっけ?って思います。
みんな渋谷でやるけど俺はこっちで、というやり方は差別化にもなって、ここで働きたい人が集まるんですよね。
――そもそもインターネットの世界にも集積のメリットってあるんでしょうか?
それはめちゃめちゃあると思います。営業の効率がいいですよね。
――そこはどのように乗り越えていらっしゃるんですか?
基本的に、ゲームと同じで制約のある中で楽しさが生まれると思っています。 営業の効率が悪いんだったら、なるべく営業をしなくてもいいビジネスができるようにしようっていう発想になればいいんです。 うちのサービスってお問い合わせベースになっていて、ぐるぐる営業でまわるっていう感じじゃないんですよね。
あとは、そもそもその営業効率の発想だと東京しか見てないですよね。でもインターネットって世界に繋がっているので、どちらかといえば空港に近いことのほうが大事なんじゃないでしょうか。

柏から世界へ――「FULLER以外にはつくれないものを投入していきたい。」
――世界の話が出ましたが、今後の目標についてお聞かせください。
来年は海外展開をやっていきたいです。今持ってるサービスは、日本だけじゃなくて世界中でニーズあるものだと思っていて、特に韓国、アメリカ、台湾とかからはじめていきたいです。柏から世界へ、みたいな(笑)
もう一つは、今サービスを届けられていない層の方にも、便利だと思ってもらえるような新しいものをつくりたいと考えています。
――具体的にどんな層でしょうか?
一部の企業向けなどではなくて、もっと世の中の人みんながITのメリットを得られるようにしていきたいです。
――なるほど、それはアプリ事業とデータ分析事業のどちらでですか?
まあ……なんか合わせ技一本みたいなやつを(笑)
――楽しみです。
やっぱり長くやってるからできるものってありますよね。たとえば、iPhoneだって、自社の持ってるいろんな強みを活かしていて、何十年もかかけてつくりこまれたプロダクトなんですよね。
長く続けてれば長く続けてるほど自分たちにしかできなかったものって出てくるはずです。
そういう、「これ絶対FULLERじゃなかったらつくれなかったよね」みたいなものを、まあそろそろ、投入していきたいです。
できなかったことができる時代、地方だからこそできることをやってほしい
――では、これから地方でITとかベンチャーを志す人にコメントをお願いします。
とりあえずやればいいんじゃないかなと思います。それであわないなーと思えばやめればいいし、別に死ぬわけじゃないので(笑)
だって、今は最大のチャンスですよね。どこにいてもインターネットに繋がっていれば世界にアクセスできるわけで、そんな時代ってこれまでなかったので。
これは以前に高専をまわったときも話したんですが、例えば、今ゲームつくりたいと思えばスマートフォンのアプリとか誰でもつくれて、すぐに世界中の人に届けられるんです。でも10年、20年前だったらできなかった。
喉から手が出るほどやりたかったけれど、やれなかった人たちだっているんですから、今できるのになんでやんないの?みたいに思います。
――地方だからできないとか、そういうことはないということですか?
むしろ地方だからこそできることをやってほしいですね。
一見弱みと思ってしまうことも、実は強みになるので、むしろチャンスなんですよね。
地域の人じゃなきゃ解決できない地域の問題もあると思っているので。
――どういうことでしょうか?
たとえば、シリコンバレーとかってすごく便利なイメージがあるかもしれませんが、タクシーとかすごく不便なんです。なかなかつかまえられないし、断られてしまう。
でもだからこそ、ウーバー(※3)という配車サービスが生まれて、すごく流行しているんです。つまり日本と前提条件が違うんですよね。不便な国だから生まれたサービスってなんです。
こういうことを日本で考えていってもいいはずで、東京じゃないから生まれるサービスっていうのは絶対にあって、それを考えるべきだと思っています。
――「その地域だから」という発想はITだけに限らないことかもしれませんね。
そうですね。全部のビジネスに共通していることだと思います。
(※1)KOIL内にあるカフェ
(※2)毎年3月にアメリカテキサス州オースティン市で開催される音楽と映画のお祭り。最近ではITの要素も入っている。
(※3)スマートフォンからハイヤーを呼び、登録しておいたクレジットカードで支払いまでできるサービス。
仲間とともに「世界一愛される会社」を目指す。(4) 渋谷 修太さん /FULLER
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