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小さな書店から広がる、つながりの輪。(1)  奥山 恵さん / Huckleberry Books


柏駅東口に広がる「ウラカシ」エリアに佇む小さな書店、ハックルベリーブックス(Huckleberry books)。2010年にオープンしたこの店は、絵本や児童文学を中心に本や雑貨を豊富に取り揃えている傍ら、さまざまなイベントを店内外で開いており、地域住民の交流を生み出す拠点ともなっている。

そんなハックルベリーブックスの店長を務めている奥山恵さんに、お話を伺った。

子どもと子どもにかかわる大人に児童文学の魅力を

――はじめに、お店のコンセプトは何でしょうか。

「赤ちゃんから大人まで楽しめる本と雑貨の店」というのがコンセプトですね。置いてある本が基本的に児童書なので、子どもとそれから子どもにかかわる大人の方にもきていただきたいですね。

――奥山さんは、児童文学固有の魅力というのはどういうところにあると考えていますか。

そうですね、それはよく言われるんですけど、やっぱり児童文学って基本は子どもから読めるので、人間の根本というか、原型や原理を描くっていうところがあって。そのような人間とか社会の一番核のところにあることがらを、ただ殺伐とは終わらずに希望をもちつつ描くっていうところが児童文学の魅力だと思います。

――児童文学に興味を持たれたのはいつ頃なのでしょうか。

私自身は子どものころ、そんなに児童文学ばかりいっぱい読んでる方じゃなかったんです。

だけど、私が大学の頃は、1980年代ぐらいなんですけども、児童文学も子どもたちとか社会が抱えているいろいろ暗い部分を描くっていう方向に変わってきた時期なんですよね。自分も、この後この社会でどうやって生きていけばいいのかとか考えていた時期で。そのときにそういう生き方の原型みたいなものを描いている児童文学って面白いなって思って。

――影響を受けた作品のようなものはあったのですか。

そのころにうちの店の名前にもなってる『ハックルベリー・フィンの冒険』を読んだんです。ハックルベリー・フィンっていう少年が、奴隷のジムと一緒に旅をするお話なんですね。その旅の中で、最終的にそのジムを助けようか、それとも逃亡奴隷がいることを密告しようか迷って、結局ジムを助けるっていう選択をしたわけなんですよ。

『ハックルベリー・フィンの冒険』っていうのは、アメリカ文学の中では高く評価されている作品なんです。

当時は奴隷を助けることは地獄へ落ちることだとされていたなかで、ハックは別に奴隷制反対とか思わないんだけど、世間ではマイナスと思われたことを自分の中に受け止めることで、結果としてその行動が奴隷制への批判になっていて、それが社会を変えていくっていう。これはすごいなと思って、それであの作品が好きになったんですよね。

――店の本はどうやって仕入れているのでしょうか。

本は、中間業者みたいな取り次ぎさんっていうのが、出版社さんから本を集めてうちみたいな書店に送ってくれることで仕入れています。

ただ、普通の本屋さんとうちが違うのは、普通大きな本屋さんは取り次ぎさんが新刊などいろいろ本を集めて送ってきて、それで本屋に置いておいて売れなかったら返す、返本ってことがありうるんですね。

その代わり、返本の場合は本屋がリスクを負わないので利益率が2割っていうすごく少ない利益になるんです。

でも、うちの場合は、私がいいとも思わない本もいっぱい送られてきて、それをまた返すっていう作業が大変なので、うちはもう送んないでくださいって取り次ぎさんに言ってあるんですよ。それで私が本を選んで注文して、本を買い取っているんです。

その買い取りは売れなかったらこっちがリスクを負うので、普通他の商品は利益がもっといいんですよね。例えば雑貨っていうのはほとんど買い取りなので、利益率は4割くらいあるんですね。

本の場合はうちはほとんど買い取りなんですけども、買い取りでも利益率が2割で返本と変わらないんですね。これが私はすごいおかしいと思ってて、出版社とかにそれはおかしいんじゃないかって言ってるんですけど、過去の出版業界の歴史から、なかなか変えられないってところがあるんですね。

――では、どのような本を重視して選ばれるのですか。

今は、大きな本屋さんの児童書コーナーとか行っても、赤ちゃんから大人まで絵本のほうが圧倒的に売れるので、いわゆる物語っていうか読み物っていうのはほとんど置かれてないと思います。置かれていても売れ筋みたいなものしかなくて、ほんとにそれぞれの作家さんがこつこつ書いているような物語とか、もっと上の年代まで読めるようなのがあんまり置かれてないんです。

でも私は大学、大学院と児童文学を専門としていて、ずっと長年児童文学を読んできて自分がいいなと思う作品はたくさんあったので、その児童文学に一番力を入れようと思っていました。

――なぜ児童文学が売れなくなってきたのでしょうか。

子どもの活字離れもありますし、あとは、絵本がすごく進化したんですよね。そっちに大人の人が行ってしまったっていうのもあって、結果的に児童文学は大人も読まなくなりますよね。

つまり、大人が児童文学を読んでその魅力をいいと思って、それを子どもに薦める人っていうのがやっぱり減ってしまったのではないかと思っているんです。

――そこがコンセプトの「子どもだけじゃなく大人も」というところにつながっているのですね。

そうですね、はい。

小さな書店から広がる、つながりの輪。 奥山恵さん / Huckleberry Books

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