こだわり抜いて育てた野菜が身近にあってほしい。(2)安生 俊一さん / Bal CHATEO
- インタビュー・構成:千葉裕平
- 2015年11月28日
- 読了時間: 6分

Bal CHATEOの外装。ぺインターのCHACKさん(下の記事参照)による鮮やかな絵が目を引く。
幸運と友情と実力で開いたBal CHATEO
――今のBal CHATEOがある物件はどのようにして探したのですか?
インターネットとかで、店舗の、空き店舗の、物件情報みたいなものを扱う、不動産関係のサイトがあるんです。飲食店専用のものもありますしね。でも、結局は自分の足で探しましたね。今の店舗も歩いて見つけました。
――変な話、開店のための資金はどうされましたか?
助成金は使ってないんですけど、融資も、かなり苦労しまして、結局融資を受けられなかったんですよ。
――銀行とかの?
日本政策金融公庫も銀行もダメで。それには理由があって、企業を退職したあと、2年間就農しない形で畑を借りて農業をやって不安定な生活だったからなんです。
僕の場合、例えば家賃を払うことで銀行口座が動くみたいな、生活の「実績」を示す材料が揃わなくて、そもそも借りる資格が存在していないくらいだって言われました。
――なるほど。では、結局資金はどうされたのですか?

そうなんですよ。物件はもう決まっている状態で。不動産屋からは、やってほしいって言ってくれていて、あり得ないことに、その不動産屋さんについている内装業者がローンを組んでくれたんです。
内装屋さんがね、リスクを負うなんてね、普通してくれないと思うんですけどね。まあ、運よく最終的にそういう形なって、本当にラッキーだったと思います。
――ところで、飲食店に欠かせない、料理を作るスタッフはどうされたのですか?
実は、料理長は高校の同級生で、前は別の飲食店でやっていたのですが、学生時代の時から、「将来やるから、一緒にやろうよ」って僕が声をかけていたんです。
もちろん、その時はまだ遊びの話でした。夢として。それで実際、農業じゃ食べていけない、店やらなくちゃって時に、彼に「店やるよ」って声をかけて。彼も飲食店で働いていたんですけど、「仕事辞めるわ」って言ってくれて。
――高校の時の同級生が料理のスキルを?
はい、僕はサービス・運営の方だったので。でも、その同級生も料理のベースはスペインじゃなくて和食だったんです。
僕が、元の会社を退社して農業を始めて2年くらいたった時に、もともとの飲食店で、このお店のオープンギリギリまで、バイトしてたんです。飲食店の勘を取り戻すためのリハビリもかねて。その時に彼も無償で厨房に入らせてもらって。その時に、「このレシピは盗んどいて」とかはありましたね。
お店に関しては絶対の自信を持っていました。友人がいたというのもその理由の一つでしたね。僕の料理スキルは未熟だから、一人でのお店の成功はないとしても、僕は料理以外のものはすべて、持っていると思ったので。
農業を飲食と両立させるために
――今まで、農業をやってきた畑は、柏だけ?
いや、農地は3回変わってて、埼玉や野田、流山でもやっていたんです。飲食店を開くために柏に来たって感じです。
――農地はご自身で所有されている?
いや、それぞれ別々の所有者から借りていました。今でも借りてるんですが、要は、畑買えないし、買える土地もないので、借りるしかないんですね。
――借りている農地はどれくらいの広さですか?
もともと借りていたところは7反(1反は300坪)で、ここにお店をオープンさせるときは、店と畑の両立のために、すごく縮小して、1反とか。今は、一応拡張して、さらに2反をお借りして、今年(2015年)の冬から始めたって感じです。
――では、今は1反の畑と2反の畑を借りている状態?
そうなんですよ。2つはちょっと離れていて、住所変わっちゃうくらい。しかも、その1反の方は、隣り合っているんですけど、持ち主が別なので、3か所と契約していることになります。
これまで3回借りていますけど、場所によっては、農法が有機農法だってこともあって、ちょっと怒られちゃったりとかもしましたね。
――虫がわいたらどうしようだとか?
草とかもですね。それはちょっとずつ、お互いちょっと歩み寄りながら、うまいことやるしかないと思うんですよね。
――お店と畑仕事の両立も大変だと思うんですが、普段安生さんはどのような一日を過ごされているんですか?
季節によって違うんです。夏は朝が早いし、過ごしやすい時期だったら、日中もぶっ通しでできるんで、8時とか9時とかに行って、そのまま3時4時くらいまで何もない時は、畑にずっと行ってます。
――畑から帰ってきた後は?
シャワー浴びて、着替えて、お店って流れですね。お店は6時からオープンで、スタッフが他にも2人いるので、お店自体は朝の5時まで営業しているんですけど、自分自体は、12時半とか1時とかで、上がって。また、寝て起きてって感じですね。
野菜を育てるのも、ワインを選ぶのもライフワーク
――ご自身が、飲食店の勤務経験の中で、今Bal CHATEOで活きている関係はありますか?

僕が務めていたのは会社だったんで、そこはすごい数の業者さんを持っていて、そこでのつてで、今回この店をオープンするときに、結構引っ張った業者さんだとかはいますね。特にワインって特殊で、すごい数の業者がいて。
実は、仕入れ先は、常に変えてるんです。定番をあまり作りたくなくて。というのも、ワインも年が変われば、味も変わるので。だから、毎年同じ銘柄のワインだけを取り扱うのは嫌ですね。
――ご自身で、ワインの味は確かめている?
そうですね。そういうのを目当てにしたお客さんが来るんで、常にこっちもアンテナ張って、先行ってないと、お客さんに言われちゃうんですよ。
――野菜を作られて、ワインも新しいものを見つけて、すごく大変ですよね?
でも、それが好きなんで。それが普段、休みの日とか、まあ、休みとかないんですけど、全部がその、自分のライフワークというかね。
「目的」として来てもらうために
――このお店のPR活動はどのようにしてなさっているんですか?
このお店自体が、他の広告媒体は使っていなくて、本当に口コミだけで、「目的」としてここに来てもらえるお客さんというのがメインです。来店動機が、クーポンサイトなどに載っているからであってほしくないっていうか、この店に関しては。
何となく調べて、ちょっと良さそうだから来るっていうのも、このお店に関しては嫌ですね。というのも、ここは20席くらいのすぐ埋まってしまうくらいの小さなお店なんですよ。
普段、あちこちに移動型で野菜やその加工品などを出店しているのが、自分の中での販促活動なんです。その結果、目的をもって駅から歩いて、来店していただきたいですね。

――どういうところに出店することが多いですか?
月1回やってるのが、東京・蔵前の“Nui.”っていうところですね。ここに、出店するようになったのは、のらさんご夫婦がきっかけなんですけど、奥さんの方が陶芸をやってて(nora-garden)、その陶芸の展示をNui.さんにお願いされたのが最初で。その時に、僕がのらさんから誘われて野菜とか焼いもを売るために、一緒に出店したんです。
――そこでの活動で何か効果をあげたことは?
そこで出店していて、その様子を見た他のイベントを運営してる人とかから、「今度、じゃあ、いついつにどこどこでイベントがあるんですけど、こっちも出てくれませんか?」みたいにオファーが来たりすることもありますね。
――のらさん以外にもつながりはあるんですか?
はい、のらさん以外にも、柏を中心に活動しているCHACKさんっていうぺインターの方といっしょに活動することもあります。一応活動の名前は“Luz Puente”というんですが。
自分の出店でワークショップなどをしてた時なんですけど、CHACKさんがいきなり、ゲリラ的にペイント始めちゃったり。主催側には言ってなかったんですけど。
――怒られたりしないんですか(笑)?
大丈夫です。刺激的な感じで、はい。なんかその、「セオリーを壊す」みたいな(笑)。
安生俊一さんインタビュー
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