仲間とともに「世界一愛される会社」を目指す。(3) 渋谷 修太さん /FULLER
- 椎名美季
- 2016年1月14日
- 読了時間: 7分

「会社って短距離走のようで、実はマラソンだと思っています。」
――起業の初期にロンドンのベンチャーキャピタルなどから多額の資金を獲得したとのことですが、特にどういったところが評価されたのでしょうか?
一つはこのチームの雰囲気だと思っていて、何をつくってるかっていうよりは、どういう人がやってるかっていうのが見られてると思います。
最初の資金を集めたとき、電話がかかってきてから投資家に会えるのが2日間くらいしかなかったんですよね。飛行機に乗って、プレゼンの準備していくんですけど、海外で英語でプレゼンするのなんて初めてでした。 そこでアピールしたのは、こういうメンバーが集まっていて、一軒家でこういう風に開発してて……俺らはネクストFacebookだ!みたいな。そしたらすごくウケて(笑)
――そんなことがあったんですね。他にはどんなところが評価されたのでしょうか。
あとはやっぱり、ものをつくる能力だと思っています。 僕がロンドンに向かう48時間の間に、エンジニアのみんながプロダクトのデモをつくってくれたんです。「これ電話かかってきた瞬間から作り始めたやつだ」って言ってデモを見せたらスゲー!って反応がもらえて。
僕がプレゼンするときにすごく大事にしてるのは、うちがいいチームだよっていうことは話すんですが、つくっているものに対してはあんまり口で説明しないで、実際に見せるっていうことです。それで一発でわかる。
要は、「つくれるよ」って言っててもしょうがないから、実際につくるんです。僕も見せることしかしない。マーク・ザッカーバーグかなんかも、Demo is better than thousand words って言ってるんです、デモをつくるのが大事だって。
――2015年に入って、再び多額の資金を獲得されましたよね。そのときのプレゼンはどういった感じだったのでしょう?
2回目も全く同じですね。あとは、みんなオフィスを1回見に来てくれて、それが決め手になりました。 オフィスを見に来て、あの空間を見てもらって……この前は、入って30秒くらいで「いくらほしい?」って言ってくれた人もいて。
――それはすごいですね……。ITの世界では、技術面の優位性がすごく厳しくみられると思っていたので意外です。
技術面の優位性とかよりも、チームワークの方がでかいと思っています。 結局、どんなことをこれからやっていけるかっていうのが投資なので、ポテンシャルが大事ですよね。ほんとにつくれるのか、ほんとにいいチームでやりつづけられるのか、だと思います。
会社って短距離走のようで、実は超マラソンだと思っています。だから、諦めずに失敗しても失敗してもやり続けたやつが最後に勝つだけなんです。諦めたときにたぶん終わりで。投資家の皆さんも、やり続けられるかっていうのが一番大事だと思っていらっしゃるんじゃないですかね。だからオフィスの雰囲気とか、実際につくったものとかを見ていて。
なぜかというと、技術的な優位性とか、例えば何かの特許があるとかって、新しいものが出てくると一発で変わっちゃうんです、特にITの世界では。 ITの世界っていうのはほとんど技術的優位性とかないと思っていて、どれだけ考えて、いいものつくっていけるかっていう勝負なんです。現状に安心した瞬間、終わるんです。
僕らの最終的なビジョンとしているのは、世界で一番愛される会社をつくるということなんです。それが結局ブランドであり、会社の価値であって、好きになってもらえるかどうかが大切だと思っています。
だから、前回投資してくださったある方に、「なんで出資してくれたんですか」って聞いたとき、こう答えてくれたのが一番うれしかったんです。「なんかこいつらだったら、失敗してもムカつかないなって思った」って(笑)
投資って結局、失敗するか成功するか誰もわからないんです。だからこそ失敗してもムカつかないって言ってもらえるのはすごくうれしいことだと思いました。

オフィスのデスクや本棚は、社員みんなの手づくりだそう
人に仕事がついてくる職場
――いいチームワークを維持するために気をつけていることはありますか?
うちがすごく大事にしているのは、仕事があるからそこに人が採用されるんじゃなくて、この人がいたからこの事業が出来た、これがつくれたっていう発想です。 だから、なにが楽しいかどんなことがやりたいのかっていうのを、ずっとみんなに聞くようにしています。
――具体的にどういうことでしょうか?
例えば最近、海外展開を始めたんですが、それはたまたま韓国人の仲間が入ってきたからなんです。彼、本当にすごいやつで、彼がいるから韓国進出やろうよって。 人に仕事がついてくるっていう発想でやっています。
――仲間が増えると、できることも増えるってことですね。今は何人くらい社員がいるんですか?
全部合わせて25人ですね。2015年の1月は13人だったので、1年で倍くらいになりました。さらに今年度内に30人、来年は50人、その次100人……とか増やしていこうと思っています。
――仕事ではなく人材ありき、という組織の考え方はベンチャー独自のものなんでしょうか?
いや、全然ベンチャー独自とかじゃないと思います。たぶん思想の問題です。 僕はやっぱり、人中心がいいと思うので。そもそも会社をつくったのもみんなの夢叶えるためというところから始まっているので、そこがうちの特徴でもありますよね。
うち、FULLERっていう社名なんですが、FULLERっていうサービスはないんですよね。インターネットの会社って、社名がサービス名ということが結構多いんですよね。でも僕はそうじゃないと思っていて、正直、ものは何をつくってもいいんです。そのときみんなが求めてるものをつくっていけばよくって。 むしろ連続してつくっていくこと自体に意味があると思っています。
だから、人ありきの組織になりますよね。 でも別にそれが正しいとか、優れてるとは思っていません。なにかプロダクトがまずあってそれをつくりたい人が集まってくるっていう組織も全然ありですよね。これはスタイルの違いなので、優劣とかではなくって。まぁ、うちはそういう考え方ですよっていう感じです。
フラットな組織構造――「会社って映画と同じだと思っていて。」
――では、具体的な企業の組織構造はどのようになっているんでしょうか?企画部、技術部、営業部……みたいに分かれているのでしょうか?
そういう風にはしていません。職種は一応あるんですが、基本はプロジェクト単位のチームになって、そのチーム内にエンジニアもデザイナーもいる、というスタイルです。
――乗り越えなきゃいけない課題があるときは、まずはチームで話し合うって感じなんでしょうか?
基本的には全部現場のチームに任せてます。社内のいろんなところで勝手にディスカッションが始まったりしてますしね。 みんな僕より優秀でしっかりしてるので、助けてもらってます。
――渋谷さんは全体の統括をされているんですか。
別に全体を統括してる感覚もそれほどないですね。 僕自身のまず第一の仕事は、絶対に資金を尽きさせないってことです。あとは会社のファンを増やす、サポートしてくれる人を増やすことです。
――なぜプロジェクト別のチームというスタイルをとっているのですか?
僕が明確に思ってるのは、普通の会社みたいに企画部が企画して、開発陣がいて、マーケティングされて……という一連の流れをつくってしまうと、どうしても階層構造ができてしまうということです。 僕は、会社って結構映画と同じだと思っていて。
――映画づくりですか?
いえ、映画づくりではなくて、演じるほうです。 僕自身も社長という役を演じてるだけで、一人の人間に過ぎない。企画してる人も企画っていう役を演じてるだけで、エンジニアもプログラムをかいてるだけで……みたいな。 誰がえらいとか、そういうのは特にないと思います。
構造として効率的な形というのはあると思うんですが、「こいつが言ってるからこれは素晴らしい」とかじゃなくて、何がいいのかみんなで話し合うというやり方を大事にしています。
だから、別に僕自身えらいとか思ってないんですよ。単純に社長役をやってるだけです。基本的にフラットな感覚が大事だと思います。
――フラットな組織だと、社員のみなさんにとって働きやすくていいですよね。
そうですね、社員一人一人の働き方に関してはあまり干渉していません。 組織として成り立たせるための最低限のルールはありますが、みんなが自分にとって一番心地よい状態で働けたらいいなぁって思っています。
仲間とともに「世界一愛される会社」を目指す。(3) 渋谷 修太さん /FULLER
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