ダンスを通じてそれぞれの居場所を。 中島多薫さん ／ダンススタジオBiTS （２）
●スタジオ経営の実情と展望
－－ここからはスタジオの経営という側面についてお聞きします。実際にこのスタジオを開くまでの経緯を教えてください。
生徒たちを何とかスキルアップさせてあげたいと思ってスタジオを作ろうってなった時に、柏に場所借りてそこに先生呼べば、スクールという形が成り立つな、というくらいの見切り発車で(笑)
－－そうしてBiTSが始まった2005年頃ってダン
スっていうものが社会的に少し認知され始めたというころだと思うんですけど、そういう点でのご苦労とかはありましたか。
都内に行けば、ストリート系のダンススクールが結構立ち始めていた頃なので、若い子とか、結構知ってて。苦労よりかは、むしろ物珍しいからみんなすごく来てくれた感じですね。
－－じゃあむしろ時期としてはよかったと。
よかったですね。今のほうがスタジオも増えたりサークルも増えていますし、テレビでもダンスの番組をやってるからテレビ見て踊ればいいっていう子もいて、無理してお金払ってまで、スクール通おうみたいな人も減っちゃってるから、今のほうが集められる生徒数は全然少ないのかもしれないですね。
－－講師の方はどうやって集められたんですか。
昔は、サークル単位でというのはちょっとあったんですけど、１ダンサーが総合的なダンススクールを開くっていうのがまだ少なかったから、こういうのやろうと思うんだけどってその頃つながりの深かったダンサー仲間に言ったら、快く講師を引き受けてくれ、みんなすごく協力してくれました。
－－個人のスクールは当時珍しかったのですか。
今はもうすっごく多いですけど。大手の会社が、いろんな事業してる中の一個としてスクール経営、とかはあったんですけれども、ホントに純粋に個人経営っていうのは、あんまりなかったのではないですかね。テナント代とか払えないっていうリスクもあったんで。
－－この場所はどのようにして選ばれたんですか。
この場所は二か所目なんです。
一番最初は、とにかく、まあ別に元手となるお金もないし、純粋に今来てくれてる生徒さんたちが続けられる場所を作りたいっていうだけだったので、サイズ的にも広さよりかは、とにかくすぐ借りられて値段も安い場所っていう形で選びました。
－－ダンススタジオだと防音対策とかも大変ですよね。
それが、最初に借りたビルのオーナーさんも、まさかダンスってこんなに大きい音を出すと思わなかったみたいで。
これはちょっと考えてたのとまったく違うから、今すぐ出てほしいということになってしまって、だけど出るに出られないから何とか謝りながらお借りしてるっていう感じでしたね。それで今度は本気で、探し始めました。
－－二件目の物件選びは慎重になったんじゃないですか？
なかなか条件にあう場所も見つからなかったんですけど、ある不動産屋さんがこの場所を見つけてくれたんです。もともとテナント募集をしている場所ではなかったので、全く手入れのされていないスペースでした。
けど、他にちょうど良い場所がなく、ここをお借りすることになり、自分達で全部掃除するところから始めました。今回は、とりあえずこの天井とかも全部防音材が入ってて、防音で三百万円くらいかけて、もう二度と出なくて済むようにやりました。防音にお金をかけた分、他はすべて手作りです(笑)
－－そんなこんなでスタジオが建って、今生徒さんは何人くらいいらっしゃるんですか？
オープンからの登録数だけでいうと、700人以上います。ただ、この前の四月にやった発表会の出演者の数というのが、実際に定期的に来てる子っていうことになると思うんですけど、それはまあ80人くらいっていう感じですね。
－－生徒さんの数ってことに関連して、集客に関してもお聞きしたいなと思うのですが。なにか特になさっていることってありますか。
特にないんですよね(笑) 一度SEO(※2）対策で業者と契約したんですけど、すごい大金を分割で、毎月そこに払っている状態になってしまって、後で冷静になった時に、そこまでして、サイト表示率一番にこだわる必要あったかなみたいに思ったんですよね。それからはどんな営業が来ても、すぐ断っちゃいますね。
※2ＳＥＯ：Webサイトが検索結果でより多く露出されるために行う一連の最適化施策の総称
－－すると今は特に集客に力を入れているわけではない？
そうですね。お金をかけて集客することはあまりないです。自分自身がもっと上手くなってスキルをおろしていけるような人材になっていかなくては、とか、自分がダンサーとしての努力もしていかなきゃいけないなとか、レッスン内容を濃いものにしていけば、自然と人は集まってきてくれるのではないかな、とかはすごく考えているんですけどね。
－－今後スタジオを拡大していこうかなっていうのは。
あんまりないですね。身の丈に合った規模で、その分心を込めてやりたい、って考えています。今の野望としてはチャリティ的なことだったりとか、地域に貢献していこうだったりとか。ダンススタジオを軸に、もっとそういったいろんな活動をしていきたいなとは思ってますね。
－－今講師の方は何人くらいいらっしゃるんですか。
12人くらいですかね。みんな時間講師って形です。でも、オープン当初からのメンバーは、今は二人しかいないですね。
－－みなさん引退なさったんですか。
男の先生なんかだと結婚を考えるとダンスは趣味にして、就職しちゃったりするから。30くらいになって「やっぱりちょっと就活始めるわ」って言って。そんな感じでも昔なら教えられたかもしれないですけど、今はやっぱりハイスキルを求められちゃうので、なかなか趣味程度でやってますっていうので教える立場を続けていくのは先生自身もすごく葛藤があったりするんじゃないかな。
－－ここの生徒さんだった方が講師になられたりもするんでしょうか。
なった子もいます。そういう子もまた増やしたいんですけど、今はまだ、過去を入れても三人ぐらいですね。やっぱりダンスだけで食べてく、ダンスの先生だけで食べてくっていうのが難しいので、どうしてもダンス続けたいってなると、自分のスタジオを立ち上げちゃう人が多いんですね。だから余計ダンススタジオが増えちゃって生徒の取り合いになっちゃいます(笑)
－- 他のダンススクールとのつながりとかはあるんですか。
ストリートダンスのスタジオとはつながりがありますね。
ダンスを通じてそれぞれの居場所を。 中島多薫さん / ダンススタジオBiTS
