ダンスを通じてそれぞれの居場所を。 中島多薫さん /ダンススタジオBiTS (1)
- インタビュー・構成 ういまさと
- 2015年11月23日
- 読了時間: 7分

「人とのつながりを切るのが嫌なんです。」そう語るのは今回お話を伺ったダンススタジオBiTSを経営なさる中島多薫(なかじま たかお)さん。
本格的にダンスを始めたのが20代半ばという、ダンサーとしては異色の経歴を持つ彼女がこの柏でダンススタジオを始めて10年。
経営者として、プロデューサーとして、そして母として様々な壁に彼女はぶつかってきた。
彼女は如何にその壁を乗り越えてきたのか。そしてダンススタジオという枠にとらわれない経営スタイルとその先に見る彼女の理想に迫った。
●BiTSを開くまで
--早速ですがダンスを始められたきっかけは。
短大で、友人のいた創作ダンス部が存続できない人数になり、頼まれてヘルプでやったのが一番最初ですが、卒業と同時にやめていて、幼稚園の教員をしている時に、ジャズダンスをやってたその部活のOGに、イベントに一緒に出よう、と誘われて。
--その時に初めて本格的にダンスを。

いえ、イベントにでるためだけに振り付けだけを真似してたような次元で、今思うとあれはきっかけではあるけど、ダンスではないなっていう感じですね(笑)
--では10代のころにヒップホップとかのカルチャーにどっぷり浸かってたというわけではないんですね。
そうなんです。いま活躍してる方はみんな若いときからヒップホップカルチャーに魅了されて、という人が多いのですが、私はすっごく遅くてちゃんと基礎なんかを始めたのはもう24歳とか。まさかダンスやるとは全然思ってなかったんです。だから、異例ですね。
--ダンスの基礎は独学で学ばれたんですか。
いえ。部活のOGと出たイベントでストリートダンスのグループと知り合い、一緒に練習させてもらいました。そのグループで出たコンテストで、北柏でダンスサークルをされているという主婦の方と知り合い交流が始まりました。
地元が一緒ですっていうことで仲良くなり、「遊びに行っていいですか」みたいな話から、そのサークルの子供をまとめるアシスタントみたいな形で行ってました。
その先生は、ダンスは好きだけど子供の対応が得意ではないそうで、「幼稚園の先生やってたならきっとうまいよね」みたいになって、で「子供まとめるのやってくれない?」って言われて。
ちゃんとした基礎を学べたのは、その時期ですね。
--その時には幼稚園の先生はおやめになってたんですか。
その頃、体を崩して幼稚園教諭を続けることが不可能になってしまっていて、休養しながら、また幼稚園の先生になるまでの一年ぐらいの間やろうかなと思ってアシスタントを始めました。
●プロデューサーの道へ
--ダンサーだった多薫さんが今みたいにプロデュースする側になったきっかけはなんだったんですか。
元々いたサークルに少人数で見てあげたらもっと伸びそうだなって子がいっぱいいて、それを先生に相談したら、「バックアップしてあげるから多薫ちゃんのサークルやってみれば」ってなったのがきっかけかな。
--じゃあ生徒さんはそのまま多薫さんのほうにも来てくれたんですか。
そうですね。ありがたいことに、そのままずっとついてきてくれる生徒さんがいっぱいいて。
--その立ち上げたのが今のBiTSと。
いえ、それは個人のサークルだったので私しか先生がいなくて、私はダンスの楽しさを伝えることはできるけど、その子たちのスキルアップには限界があるな、と思って。
それなら先生として各ジャンルをきちんとやってきた人が、この子たちを見てくれたらいいんじゃないかと思って立ち上げたのが、いまのBiTSなんです。
--立ち上げる場所として柏を選んだのはなぜですか。
ついてきてくれた子が通える場所を作りたく、その時の生徒さんがみんな柏に住んでいたので。
また、ストリートでずっと練習していたことで、柏のダンサーとも繋がり、ここでならできるのではって感じたので、ほかの地域でっていうのは全然考えられなかったですね。

--ダンスの楽しさっておっしゃいましたけど、逆にそれを伝える難しさっていうのもありますか。
キッズクラスに関しては、子供たちのモチベーションが、みんなまちまちなので、スキルアップだけのために来ている子もいれば、まあ友達としゃべりたくて来てる子たちもいたりとかして。いろんなとらえ方の子たちが一緒のクラスでやってく難しさは、あったりもします。
--多薫さんとしてはどうですか。モチベ―ションの高い子と低い子がいるっていうのは。
どっちも私は否定したくなくて、なんだろう、どっちも私はアリだなと思っちゃっています。その子にとってダンスが、ホントにきっかけであって、ここで仲良くなった子がいて、それが、その子にとっての生活に潤いを与えてるんだったら、それはそれで一つのダンススクールの在り方なのかなって考えてるんです。
--ダンスの技術重視なのか、ツールとしてダンスを提供するのかっていうのは難しいところですよね。
そういうところは今でも葛藤しながら、毎回悩みながらやってますね。まあ、「やるときはやるっ!」ていうのだけはすごく話しながら。ただ、ふつうの学校と違って先生と生徒さんの距離が近い分、フレンドリーすぎちゃって(笑) だからこそけじめだけはつけなきゃな、と思いますね。
--ダンスを踊る側とプロデュースする側の違いについて教えてください。
自分だったらもっと練習するんだけどな、みたいな(笑) 練習してって言わないと、練習しない子もやっぱりいるので、もどかしいですね。
--生徒さんの指導に関連してなんですが、ダンス以外の部分で礼儀正しさというような面でのご指導もなさっているんですか。
挨拶は絶対してほしいし、返事もしてほしいです。ただ、挨拶できないからダメな子、とか、返事できないからダメな子、みたいな風には思いたくないですね。中身はこの子イイ子なんだよね、素直な子なんだよねとか。そういうとこはちゃんと汲んでいきたいなと。大人になっても挨拶しない、みたいな子はいないので、長い目でみてます(笑)
--挨拶とか返事できないシャイな子でもダンスになると自己表現できるっていうような子もいるんですか。
いますね。いろんな性格の子がいるけど、まあ目立ちたがりでダンスをやってる子もいるし、意外な雰囲気の子がダンスにのめりこんでたりすることも結構あるので、その子にとってダンスしてるときは自分を解放できてる時なのかな、と思う部分もありますね。
--先ほど幼稚園の先生をやってらしたとおっしゃいましたが、その頃の経験が活きていると感じるときはありますか。
私、幼稚園の先生やってるときは、子どもを管理するノウハウみたいな一斉保育が嫌だったんですよ。先生の話聞かせるために気を引きなさいとか。でも今では話を聞く空気を作るっていう経験が活かせてるのか、みんなシーンってなってくれて話せちゃうとかいうことはあります。
あとは、大事な話しなきゃいけないって時には、必ずメモをいっぱい書いてきますね。で、頭の中でもシミュレーションしてっていう。練習のスケジューリングとかも日案(※1)を書いてたのが活きてるのかな。
※1日案:幼稚園などで書かれる一日の保育内容のスケジュールのこと。
--生徒さん同士のタテのつながりみたいなところもこのスタジオではあるんですか。
全員で一個のストーリーをダンスだけで表現するっていう発表会も以前はやったんだけど、その時は、子どもから大人まで、クラスに関係なく気持ちを一つにして練習に励んで、つながりが深かったのですが、今はそういうことよりも、コンテストで勝つことなど、目に見える成果を優先する子や保護者も多くて。
なので最近は、純粋に自分のつきたい先生の作品だけ出るっていう普通の発表会だけをやってるので、タテのつながりが希薄になってきちゃったなぁっていうのはあります。
--それに関して今後なにかアクションを起こされるんですか?
ちょうど今十年目で、来年の秋に十周年記念公演的なことをやろうかと思っています。そこでまあ、個人的にはちょっと賭けですけど、またみんなで一個のものに挑戦しようかな、と考え中です。だからそこでまたタテの関係ができるといいんですけどね。
ダンスを通じてそれぞれの居場所を。 中島多薫さん / ダンススタジオBiTS
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