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人から人へとバトンをつなぐ。 森田 晋介さん /Marche' Baton (2)


いろいろな縁が生まれるカウンター

「作っていない僕らが味を美味しく感じさせるために必要なのは、説明を尽くすことだと考えています。」

―食材やお酒にこだわっているそうですが、何を一番気にかけていらっしゃいますか。

まずは味だと思います。オーガニックだとか、無農薬だとかいうのももちろん大事ですごくいいことだと思うんですけど、美味しくなければお客様に提供する意味はないと思うんですよね。

僕らも無農薬農家さんとかとたくさん付き合いがあって、そこから上がってくるお野菜は徹底的に美味しいという自信を持って出しているんですけども、たとえば美味しくないものが上がってきたときに、じゃあ無農薬だから付き合うかっていうと、付き合わないですよ。

逆に農薬をや化学肥料を使っていても、それがきちんと安全な使い方をしていて美味しい野菜だったら料理に使ってもいいと思っています。

―お酒もやはり大事なのは味でしょうか。

そうですね、やはり。ただ、僕らはただワインもビールも作っていないじゃないですか。だから、作っていない僕らが味を美味しく感じさせるために必要なのは、説明を尽くすことだと考えています。

例えば星月夜っていう珍しいビールを出すときに、「このビールは新品種ジャリロホップというすごく香り高いホップを使っていて、貴重だからこれを使ってる日本のブルワリーってほとんどないんです。とても美味しいんですよさあどうぞ」って言ったほうが、たぶん三割美味しいと思うんですよ。

極端な話、美味しくないものも僕らが売ると美味しく感じてもらえる位のサービスで提供したいなって思ってます。だから、スタッフもちゃんと説明できる人であってほしいと考えて、そういうことを教えています。

それに、飲食店って何か面白くないと来ようと思わないですよね?例えば演出が良いとか、従業員さんたちのオーダーが入ったときの掛け合いが面白かったりとか、目の前で作ってくれたりとか。そういうエンターテイメントみたいな要素も必要だと思っています。

―味へのこだわりを持つようになったきっかけは何でしょうか。

コーヒーなんです。僕は十年前にサラリーマンを辞めてタリーズのフランチャイズの店長になったんですが、当時はまったくコーヒーなんて分からなくて。

で、いろいろ勉強した結果豆の焼き方や産地で味が変わると知ったんですが、作る過程を遡って考えるうちに、味の決め手になるのは農業だという結論に至ったんです。

でも自分で美味しいものを探すとしても、コーヒーの産地ってアフリカとか中南米とかなんで、遠いしお金かかるじゃないですか。だから国内にしようかなって(笑)

そしたら日本の農家さんが想像以上に面白かった。ハマっちゃった。

「お客様に喜んでいただくこと。ありきたりな答えになっちゃうんですけどそれが本当、僕の中では全てです」

―飲食店をやりたい気持ちはいつごろから…?

あのねー、やりたくなかったんですよ飲食店。

―やりたくなかったんですか!?

やりたくなかったんですよ。僕不動産屋さんだったので、やっぱり赤字を背負って退転する飲食店は何度も見ていて、店主の方に泣きつかれることもあったんです。それで「飲食店は悲惨だな」と思ってたんですけど、そんな交渉の前後にいつも休憩してたのが日本橋のタリーズだったんですね。

僕の父は野田で会社を経営しているんですが、ちょうどそのころ飲食部門を作りたいと僕に声をかけてきていたんです。一旦は断ったんですが、聞けばタリーズをやりたいって言うから…いやちょっとタリーズは好きだな、と。

前の会社は大好きだったんですが、一生勤めてていいのなって思っていた時期でもあったし、タリーズもその当時はまだベンチャー魂というか、勢いのある会社だったんで、それで、それじゃやってみようか、ってなったのが切っ掛けですね。

―その後マルシェバトンを開かれたわけですが、自分のお店を持とうと思った理由は。

一つにはやっぱり、リスク管理っていうのがありますね。

フランチャイズビジネスの怖いところは、自分がどんなに一生懸命やってても巻き添えを食らうことがあるところ。食品偽装とか。そういうのはやっぱり避けて通れないのかなーと思って、オリジナルの業態を一つ持つべきだろうと。

それが、飲食でなくても物販とか、まあいかなるものであっても持っておくべきだろうとタリーズを始めた当初から思っていました。

―冷静に計算なさっていたんですね。やはり開かれたときは自信を持って?

いや不安しかなかったですね。計算はもちろんやりますし、必要だと思うデータはとことん集めますが、商売は上手くいく保証の無いものなので。上手くいくイメージはもちろん持っていましたけど、失敗したらどうしようってのはいつも考えていましたし、今でも考えています。

―ここのお店を開かれるまでに苦労したことは何かありますか。

苦労したこと…物件探しですね。

僕は春日部と流山でタリーズコーヒーをやっているので、電車で一本で行ける北千住と大宮と柏とで探していたんです。柏は子供のころからよく来ていた街だから柏がほんとは良いんだけどなって思いつつ物件がどこも高くて高くて。

手が出せなかったので諦めかけていたんですけど、その時にぽんっとこの物件が見つかって。その時にはやりたい形が決まっていてあとは箱だけだったんで連絡を取ったんですが、最初飲食店はダメって言われたんですよ。

そこから粘って、やりたいことを説明したらオーナーさんがオッケー出してくれて、でそこからとんとん拍子で、という感じでしたね。

―森田さんの場合はサラリーマンとしての経験があったわけですが、起業するうえで会社勤めの経験は重要だと思われますか。

そうですね、会社に入るのは大事かなって思います。組織を作るのってやっぱり組織の中に入って体験しないとイメージができないと思うんですよ。

でも仕事との向き合い方っていう点では、独立していようが会社に入っていようが全力投球でやんなきゃいけないってのは一緒です。ただ仕事のやり方というより将来の展望を考えた時に、一回組織に属していた方が面白いというか、具体的にイメージしやすくなるかなって感じはしますね。

―飲食店を経営することのやりがいとしては、どういったものがありますか。

やっぱりお客様に喜んでいただくっていうことに尽きると思うんです。

自分がいいものを作るよりも、それをお客様が喜んでくれるのが一番なんで。ありきたりな答えになっちゃうんですけどそれが本当、僕の中では全てです。

「採用した子が活躍して日本経済をバリバリ動かすと、僕の年金もちょっと増えるかもしれないし(笑)」

―反対にお店をやっていく上での苦労というものは。

傍から見るといっぱいあるみたいなんですけど、結構忘れちゃうというか。昔つらかったことって、結構いい思い出になってません?僕そのサイクルが早いみたいで(笑)

今日イライラしてても、寝て起きると「まああれはあれでいい思い出かな」って。

でも、仲間が離れていくっていうのは、まあざっくばらんに言うとバックレですけど、それが一番悲しいし、つらいですかね。

今までやっぱそういう子は何人もいて…、その子は今何やってんのかなっていうのは、毎日のように思い出しますね。それだけ思いを込めちゃったんで。

―思いを込めるとのことですが、スタッフとの関わりで大切になさっていることはありますか。

そうですね…諦めないようにしています。未来もあるし。

こう、アルバイトの状態の時に言われていることって、社会人からすると基礎にも引っかからないような、もう当たり前のことなんですよね。でもそれを、「この子はいつまでたってもやらないから」って言わなくなっちゃうと、その子はもうその先がなくなっちゃうんです。

やっぱり採用したからにはいい子になってほしいし、その子が活躍して日本経済をバリバリ動かすと、もしかしたら僕の年金もちょっと増えるかもしれないし(笑)

―スタッフの方のことをちゃんと考えてらっしゃるんですね。

やっぱり人生なんで、忙しいときにはお互い様で、チームとして頑張んなきゃいけないとか思うんですよ。

一時的にものすごいマンパワーが必要な時に休んでいいよとは中々言えないこともあるんですけど、夏休み、お正月休み、ゴールデンウィークは連休をとれるようにしていますし、賞与や昇給などの点もできるだけしっかり出そうという風にやってます。

―飲食店をなさっていく上で、飲食業界に何を望まれますか。

嘘をつかないでほしいですね。食品偽装だけじゃなくて、労働条件とか。例えばあるんですよね、お給料30万って言われて若い子が移動したら、22万しかもらえなかった、とか。そういうのって飲食店すごく横行してて、大っ嫌いなんですよ。

マスコミで報道されている企業なんてむしろしっかりした方かもしれない。もっとブラックなところと言うか、もっとだらしないところなんてホントにあるんです。社会保険も入れない、年金も入れない、そんな所いっぱいあるんで。だから、従業員に対してもそうだし、産地だったりとか、何に対しても嘘をつかない。そんな業界になってほしいなと思います。

人から人へとバトンをつなぐ。 森田晋介さん/Marche' BATON

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