ジーンズを直した人が、5年後も喜んでくれてればいいんです。(3)矢島太郎さん・さくらさん / ジーンズリペア ゴエモン
- インタビュー・構成:山脇耀平
- 2015年11月3日
- 読了時間: 6分

ミリ単位の調整が必要な細かい作業
めんどくさいことをどこまで続けられるかっていうだけ
ーーファストファッションが浸透し、ちょっと使ってすぐ捨てるという考え方が広まっている中で、もっとものを大事にする世の中になってほしいと思いますか。
矢:あんまりないですね、それはそれですし。
もちろん、ものを大事にするのはいいことだと思いますけど、じゃあファストファッションを否定するかというとそんなことはないです。2000円のジーンズでも「10年履いて2000円以上の価値があるから、1万円かけてでも修理したい」と店に来られる人もいますし、別にファストファッションが悪いとは思わないですね。
ーー世の中にアンチを提案してやろうとかではなく、あくまで直す喜びを感じていると。
矢:難しいですね、そのへんは、別に着たいものきればいいんじゃないかと思います。あんまり凝り固まった考えでいても仕方ないので。
ーー失礼ですが、もっと頑固な方だと思っていました笑
矢:いや頑固なんですよ、すごい頑固なんです。
ーーどこが頑固だと思われるんですか。
さ:やっぱり手を抜かないところじゃなですかね。わたしとかはもっと早くやればいいのになってすごく思っちゃうんです。これだけ、10年も同じことやってるのに、ブレずにやってるのはすごい生き方だなと思います。
矢:ダメだよね、もうからないからね。
さ:お店のやり方はもうちょっと考えていかないといけませんが、手を抜けないところがこの人のいいところなんだろうなって思っています。
矢:ほんとは誰にでもできるんです、誰にでもできるけど、性格的に続けられるか続けられないかっていうだけなんで。めんどくさいことをどこまで続けられるかっていうだけなんで。
さ:リペアがちょっとでも納得のいかない仕上がりだと、たとえ90%くらい完成してても一からやり直しますからね。
矢:だめだね、細かすぎると笑
ーーすごい職人魂だと思います。
さ:でも太郎は自分で自分のこと職人って言ったことないんです。
矢:職人はもうちょっとすごい腕を持ってる人のことだと思っているので笑 だいたい2、3年経つと職人になったと勘違いしてしまうんですけど、「そんな簡単じゃねえよ」って自分に言い聞かせてますね。
ーーそのようにご自身で技術を追求される中で、葛藤する部分はありますか。
矢:ゴエモンのメニューに「クイックリペア」というのがあって、さっきも少し話したように、そこまで時間とお金をかけたくないお客さんのために、応急処置的にリペアするというものなんですけど、これが難しい。
僕としては「これだとまたすぐに破けちゃうんだけどな」っていうのをわかりながらリペアするのが、この仕事を始めたころはすごく苦でした。本当はやりたくないけど、食べていくためには幅広いお客さんの要望に応えないといけない。頭ではわかってるけど心がついていかず、ものすごく葛藤していました。
ーーなるほど、それは難しいところですね。
でも今ではそこも技術でカバーできるようになりました。というのも、クイックリペアをした後にもし万が一破けても、破けた部分を違和感なくさらに補強できるようになったからです。それができるようになってから、怖さのようなものがなくなり、自分の中で納得してできるようになりました。
そういう風に「技術でどうにかカバーできないか」常にいろいろ探求しています。やればるほど経験や知識もたまっていくので、いろんなことを自信持ってやれるようになってきました。
古着好きが集まる、カッコいいベントにしたかった
ーー柏で開催されるイベントにも積極的に参加されているのですか。
ー参加もしてますし、主催もしています。例えば「柏ジャンクマーケット」を主催しました。4年前ですね。もともと「Gleeful(※1)」オーナーの三輪くんが、人が少なくなった柏になんとか人を呼びたいというのをウチに相談しにきたのがきっかけで。
(※1)Gleeful(グリーフル)…柏にあるアメリカ古着屋
さ:もともとそんな話はちょこちょこしてたんだよね。柏ってこれだけ古着屋さんがたくさんあるのに、合同で大きなイベントやったことがなかったんですよ。
矢:僕がいろんなお店に全部声をかけて、第一回はほとんど全部のお店が出てくれました。それから第2回、第3回、第4回と、これまでに4回開催しています。
ーー日々の仕事がありながらイベントを主催するのは大変ですよね。

矢:そうですね、イベントの案内に載せる全店舗の紹介文も自分で書いてましたし、時間はなかったです。
あとは本当に貸してくれる場所がなかった。1回目は知り合い向けの倉庫の駐車場を借りてやったんですけど、ありがたいことに思ってる以上にお客さんが来てくれて、むしろ周りに迷惑がかかりそうだったんです。
柏ジャンクマーケット
もうぎゅうぎゅうで。本当は2回目も3回目もそこでやろうと思ってたんですが、さすがに手狭で「もうちょっと広いとこ探したいね」って考えてたときに、ストリートブレイカーズ(※2)の方に声をかけていただいたんです、「駅前の公道でやりましょう」って。
(※2)ストリートブレイカーズ…柏商工会議所青年部が考案し、1998年に創設されたイベント団体
じつは、最初は駅前でのジャンクマーケット開催に抵抗があったんです。なぜかというと、いろんな人が来すぎてしまうから。なんとなく自分の中で「ジャンクマーケットはこうあるべきだ!」っていうイメージがあって、本当に古着好きだけが集まる、カッコいいベントにしたかったんです。でも、もし駅前で開催してしまうとそれが難しくなるのかなと。
さ:コアな人だけを集めたイベントがね。
ーーそれだけこだわりのこもったイベントだったんですね。
矢:そうですね、いろんなところにめちゃくちゃこだわりました。
さ:チラシも私の元同僚のCODSWALLOP ARTWORKS(コッズワロップアートワークス)の今村くんがつくってくれて、めっちゃカッコよく仕上がったんです。
(※3)Chair-chair(チェアーチェアー)…柏のアンティーク家具ショップ
とにかく素人がゴザ敷いて商品を置くような”フリーマーケット”にはしたくなかったんです。”フリーマーケット”と”ジャンクマーケット”を分けたくて、なんでも10円とかで買えて、どんどん値切ればいい。みたいなイベントじゃなく「僕たちはちゃんと店を構えて、こだわりを持って商品を売ってるんだよ」っていう姿勢を見せたかった。そこの差別化がすごい難しかったですね。
矢:雰囲気を出すためにテントを立てて、その中で販売してもらったり、とにかくイメージ作りが難しかったです。でもこだわってやったおかげて、お客さんにも喜んでもらえていいイベントになったと思っています。
矢島太郎さん・さくらさんインタビュー
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