音楽仲間と飲む、一杯のビールのために。(3)南部 一樹さん / DOMe柏
- インタビュー・構成:五十嵐泰正
- 2015年10月5日
- 読了時間: 9分

応援していきたいバンドとの関係を蓄積していった先に、「柏からの発信」がある。
――DOMeさんは地元の方を応援していきたい、柏から発信していきたいってことを強く打ち出されていると思うんですけど、そこにどういう思いがあるのかなっていうのを、あらためてお聞きしたいです。
まあ、ちょっと白けたこと言えば、僕は広島の人間なので、柏にすごい思い入れがある訳じゃないんですよ。
でもやっぱり、柏の友達っていうか、知り合ったバンドマンにはすごく思い入れがあるんで、そういうバンドマンがやりたいって言ったら、それを手伝うっていうか。やっぱり個人のつながりがないと、あんまり僕は動く気になんないっていうか(笑) 顔が見えないところでは。
そういう手伝いたい人が増えてきて、柏から発信っていうのがなんかこうオフィシャルっぽくなってるのかなあっていうのはあります。
――そういう地元のバンドとか、どういうところで知り合ったりとかするんですか?
最初はやっぱり、出たいみたいなメールが来るんですよ。それで何回か出てもらってるうちにウマが合うというか、もちろん僕だけじゃなくて、スタッフと仲良くなったりして。だんだんこう、蓄積ですね、それも。
そのうち有名になる人もいるし、ダメになる人もいる。それでもまあ、バンドやめても繋がっていける仲っていうか。商売にならないです、だから(笑)
――ウマが合う、もっと出てほしいなっていうのは、どこらへんが大事なものなんですか?
やっぱり、終わった後に一杯交わす時ですかね。親密になりますね、そこではケンカもするし。プライベートで飲みに行ったりもしますしね。…酒かな(笑)
――ケンカっていうのは、例えば、どういうことですることがあるんですか?
例えば、バンドが客呼ばないとか、集客が少ないだとかでケンカになりますし。もうちょっと動けよみたいな、お互い様なんですけど。
それと、お客さんいっぱいいる前でみっともないライブをしたり、そういう時はやっぱりちょっとカチンとはきますね。やる気あんのか、とか金八みたいなこと言ったり(笑)
あとは、遅刻すんなよとかぐらいですが、仲いいバンドほどやっぱり、そういうぶつかり合いは出てきますね。
――柏にもミュージシャンがたくさんいると思うんですけど、お付き合いする中でその人たちの志向性ってどんな感じですか?
三つくらいに分かれてきますかね。
まずは学生の延長で、やりたい人は社会人になっても趣味としてやる人。
それからインディーズって言われる枠で、DIYで全部やる人。パンク系が多いですね。ホタルライトヒルズバンドとかもどっちかっていうとそっち。
もうひとつはメジャー志向で、売れても売れなくても思いを遂げたらもうやめちゃう、でも売れる人は売れる。
――柏はストリートミュージシャンが多いですが、そちらはどうですか?
ウチのスタッフが、スカウトには行ってると思います。出ないか、みたいな(笑)
でも最近あんまり元気ないですね。10年前くらいは、ゆずとかのブームで。でもそのあと、アンプを使うなっていう規制が入っちゃったじゃないですか。それ以降は、あまり人を集めている人は見ないですよね。
それと、路上でやるってことの主旨が変わってきたのも感じます。俺は路上でやるんだ、みたいに結構がんこなんですよね。
昔は路上でやるっていうのは客を集めて大きいステージに行くためにやってたんですけど、今はもう路上で何人か集まって満足している人が多いんで。あんまり声かけても引きが弱いっていうか。自分が歌って、カラオケじゃないですけど…
そんな中でウチに出たいって人は、ステップアップしたい人がやっぱり多いですね。
--柏と東京のミュージシャンを比べるとどうでしょう?
ライブハウスも、やっぱり東京の方が全然多い。でも、実力差はないですよ。柏はすごく実力ある街なんで、音楽的に。むしろちょっと勝ってるんじゃないですかね。
東京…。けっこう腰入ってないよね、東京のミュージシャンは。腰が入ってない(笑) すぐ帰るし、打ち上げもせずに。
東京はやっぱりメルティング・ポットっていうか、いっぱい集まってるからそうなるんじゃないですかね。
たとえば大阪とか群馬とかでもこういう感じで地元のコミュニティはあると思いますよ。東京は、それが割とゆるい、弱いっていうか。
柏はやっぱり地方都市で、東京選ばずに柏選んだっていう結びつきが強いんですよね。ライブハウスとバンドの、それからバンド同士の。そこにシーンみたいなものがあるって言い方できるんじゃないですか。
――こういう柏のシーンをこれから作っていく若い世代のことはどう見ていますか?
ミュージシャンって、最初出たところにずっと出るっていう性質があるんです(笑) だから、最初の時点で、高校生の時に出てもらえるように仕向けてっていうか、そういうやり方はしてます。
今はコカコーラさんが、ティーンミュージックコンテストみたいなことを、だいたい年一回やってくれてるんですよ。ここも含めて何カ所かでやってるんですけど、そこに応募がすごくありますね。それがファーストコンタクトとしては、一番来やすいですね、今は。
だいたい市川とかその辺ぐらいまで、学校単位で多いところは5バンド、10バンドぐらい、落とさなきゃいけないぐらい軽音部の顧問の先生が応募して来るんですよ。
そこで、ちょっといい感じの子たちがいたら声かけて、出てみないかみたいな。
――そういう高校生の子たちに声をかけてく基準っていうのはどんな感じでしょう?
目の輝きですかね(笑) なんていうか、がっつき具合ですかね、やっぱり。出てみたいです!みたいのを前面にこう出してくる人。
趣味でやってるんで、みたいな子に対しては、じゃあ卒業ライブとかを主催してみませんかって先生に持ちかけたりもしますけどね。
――やっぱりその年代だと、やる気があるかどうかで実力が全然違いますか?
いやいや、それは意外と冷めてる子の方がうまいんですよ(笑)
やっぱり頭がいいんで、音楽にも真面目に取り組んじゃうんですよね。だけどどうせ食えないし、プロはいいよみたいな。
でも、ガッついてる子の方がその後は伸びますね、やっぱり。じゃないと、報われないですよね(笑)
「音楽の街・柏」であるために、DOMeという持ち場を守ること。
――柏はストリートミュージシャンが多くて、ライブハウスもたくさんある。2014年からはライブハウス回遊型の柏Music Sunみたいなイベントも始まって、DOMeさんも積極的に協力してますよね。音楽の街、みたいな言い方もありますけど、その辺はどう思いますか?
10年前ぐらいですよね、音楽の街って言われていたイメージって。これからはMusic Sunとトネジャム、あの辺を大きく見せていけば、そうなってゆくのかなあと思いますけどね。
ライブハウスで言えば、都道府県単位でツアー回るってときにやっぱり千葉市が第一じゃないですか。柏って結構はじかれちゃうんですよ。まあ、最近パルーザができて結構でかいバンド来るようになったんですけど、100~150人キャパくらいだと、千葉にあるLOOKに行っちゃうことが多い。
Music Sunをやることによって、柏っていう音楽の街があるってなると、ツアーバンドがこっちに来やすくもなるんじゃないかなっていう狙いがあって、そういうイベントをやろうってことになったんです。
――そういう中で、柏はこのジャンル、みたいのはありますか?
Music Sun的には、やっぱり歌モノですね。rockin’ on Japanに出るような。ちょっとギターロックで、メロディがあってメインストリームを狙えるようなバンドを呼ぼうっていうのがMusic Sunの主旨、目標なんです。
ただ、音楽の街にするって部分では、Music Sunの主催者は色々な戦略を考えてますけど、僕はそこまで考えてないんです。とにかくここを経営して守っていって、持ち場をこう、絶やさないようにって気持ちが大きいです。

――そういった現在のお考えになるまでに、Drunker’s Stadiumからの9年間で音楽に対してとか、経営に対してとか、考え方に変化とかありましたか?
変化は…常に変わってますよね。価値観というか。
最初…、いや途中で、なんていうんですかね、経済活動をしないと続けていけないのかなという指向にもなったりしたんですけど。
儲けないと、お店自体が潰れちゃうな、続けらんないのかなと。
今はそこを通り抜けたっていうか、ちょっとまた変わってきまして。
まあ、カッコいい言い方すれば、世のため人のためじゃないですけど、なんかやっぱり人のためになることをすることによって、全てがこう、うまい具合に回ってくるのかなみたいに感じてますけどね。
――じゃあ今は店の規模を大きくしていこうっていうのは、あんまり…
そうですね、あんまりないですね。ないですけど、このキャパの中で、最大限にはしていきたいですね。お客さんを増やして。
――最後にこれから起業を考えてる人たちに向けて、何かメッセージはありますか?
メッセージ、うーん、それは特にないなぁ。
まあでも、ホントによくある話ですけど、やりたいと思ったことやった方がいいんじゃないかと思いますけどね。後悔していることや、知らなくてよかったことも一杯ありますけど、僕は知ってよかったことを選びたい。
田舎ですぐ結婚してそこで終えていく人生も、それはそれなりでそっちの方がよかったかな、と思うことも何回もありますけど、今、やった方がよかったかなあと思ってますんで。天秤に掛けたら。
たぶん音響だけでやってたら、今担当してるバンドたちには会わずにもう広島帰ってたんじゃないかと思うんですよね。
その人たちが一線でやってる人たちと知り合って、まあ僕も一線でやらせてもらえる、ま、その手前っていうか。彼らと知り合わなかったら、もう広島に帰ってまた水道屋とか電気屋とか、それはそれで心地よかったんで、やってるんじゃないかなあと思う。
今度9月に40歳になるんですよ。そのときイベントやるんですけど、返事を即答でくれる時ですかね。「行きます!」みたいな(笑)
その時は、やっててよかったなあと思いますね。信頼関係できてるんだなあって。
――ご自身で培ってきたものですものね。それは嬉しいですよね。
でも、思い入れのあるバンドってもう結構ベテランなんです。それを見て、また下の世代の子たちがやる気になってやってくれればいいし、それもどんどんくり返しで。若手がいないとどんどん衰退していっちゃうんで、ライブハウスは。発掘の方が大事ですね、どちらかと言えば。

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南部一樹さんインタビュー
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